武川寛樹先生

Dr. TAKEKAWA

先輩からのメッセージ 
武川寛樹先生

筑波大学医学医療系 顎口腔外科学 教授
1984年日歯大卒業。86年筑波大医学専門学群に進学。91年の5年次には医師のM.D.と歯科医師のD.D.S.を融合したMDDS会を発足し、現在も全国のダブルライセンス所持者(取得予定者)との連絡を密に取っている。92年筑波大医学専門学群卒業後、横浜市大大学院医学研究科入学。95年横浜市大大学院修了後、同大医学部口腔外科学講座に入局。2002年千葉大学医学部附属病院を経て、2009年筑波大学教授に就任し、現在に至る。

歯科と医科の垣根を越えて

  • 日本歯科大学卒業後、口腔外科学第2講座に勤務していたとき、進行口腔がんの患者さんに出会い、新米歯科医師である自分の無力さを強く感じました。その悔しさから、医学を一から学び直そうと医学部に入り医師免許を取得しました。現在では口腔がんの患者さんに対して、手術療法や化学療法・分子標的療法、陽子線をはじめとした放射線療法などさまざまな治療法を選択し、それぞれの患者さんに最善を尽くすことができます。当時の無念さがあって今があると思います。
    ダブルライセンスのメリットは、医師としてのトレーニングを受けることができ、そこで根本的な勉強ができることです。歯科医師になりたての頃は、心電図や肺の見方、循環、呼吸など、わからないことがたくさんありました。でも今では、全身のことである程度のことはなんでもわかります。また、外科のトレーニングでは約1年の間に、胃がんや乳がんの執刀、内視鏡での摘出など54症例の手術を執刀し、また多くの修羅場も経験しました。そのようなトレーニングが今の自分のベースになっています。
    現在の仕事は、臨床、研究、教育の3つがメインとなります。臨床分野では、外来の患者さんの診察や、難しい症例の手術があります。研究は、主に口腔がんの研究です。micro RNAや分子標的療法の解析と臨床応用を行っています。教育は、医学生に対して歯科・口腔外科のトレーニングを行っています。
    今後の目標は、少しずつでもダブルライセンスを持つドクターを増やしていければと思っています。そしてこれからはますます、歯科と医科の両分野が連携していってもらいたいと思います。
    口腔の管理をしっかりすれば全身の合併症を防げることが最近わかってきています。これから歯科医師をめざす方には医科に対しアピールするような研究や臨床データをどんどん発信していってもらいたいです。口腔の分野は奥が深くアカデミックな領域です。現在あるものだけではなく、常に新しいものを自ら切り拓いて行っていただきたいと願っています。

  • 毎日分刻みのスケジュールの中、
    質問に来た学生には時間の許す限り丁寧に指導する
  • 外来診療風景。写真左は同じく
    ダブルライセンスを所有する柳川徹准教授