日本歯科大学 病理学講座
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学生の活動

病理学では病理組織切片の観察を基盤として、病変にみられる細胞・組織の変化から病気の成り立ちや予後を学びます。口腔病態病理学と併行する生命歯学探究カリキュラム(第2学年後期)では、研究テーマとして「口腔領域にみられる病変の病理組織学的特徴」を掲げ、グループ作業によって病変の詳細な解析を進めていきます。

以下にこれまでの病理グループの探究成果を紹介します。

平成29年度 「粘膜表在性病変におけるサイトケラチン分子発現」

癌が疑われる初期の口腔粘膜病変では、HE染色による形態観察のみで悪性変化を捉えることは困難です。病理診断の現場では、上皮細胞骨格であるサイトケラチン(CK)ファミリー分子のうち、CK13は異型変化が進むと発現が消失、CK17は癌化した上皮で新たに発現する傾向に着目して、免疫染色による検出が診断補助に用いられています。本研究では、両分子の発現の関連性を明らかにする目的で粘膜表在性病変のCK13・CK17発現パターンを解析しました。
舌粘膜の初期病変(上皮性異形成症例)のHE染色・CK13免疫染色・CK17免疫染色のセットを20症例151切片分観察しました。CK13では“発現が消失している箇所”、CK17では“発現している箇所”をそれぞれCK13異型領域、CK17異型領域と定義し、染色画像を拡大印刷した紙媒体上でCK13異型領域とCK17異型領域をプロットしていきました。

異型上皮幅を計測してCK13異型領域とCK17異型領域の対応を確認すると、両所見が重複している領域幅は全解析領域の4割程度に留まりました。この解析でCK13異型が優位な症例とCK17異型が優位な症例が混在していることが判明し、CK13・CK17発現変化は独立した事象である可能性が考えられました。

CK13−CK17発現相関の検証には、画像解析プログラムImageJ/FIJIを用いた画像解析も行いました。初期の粘膜病変において、上皮の悪性化にともなうCK13・CK17分子の発現移行様式は多様であり、症例ごとに悪性化のプロセスが異なることが示唆されました。画像統合による分子発現局在の解析によって特徴的なCK発現移行様式の存在を明らかにすることができました。

平成28年度 「舌扁平上皮癌における細胞増殖活性と異型性」

口腔癌のなかで最も発症頻度が高い舌癌(扁平上皮癌)の病態解析を行いました。サイトケラチン(上皮細胞マーカー)とKi-67(細胞増殖マーカー)の免疫染色標本を対象とした健常粘膜−癌組織の比較解析によって、細胞増殖活性と癌胞巣サイズ・形状との関連性を突き止めました。本グループでは、2次元平面画像での形態計測に加えて、画像解析ソフトウェア(ImageJ/FIJI)を用いた詳細な3次元構造解析も実施しました。連続切片データから癌胞巣と間質領域を分画し、休止期の細胞核(ヘマトキシリン陽性)と増殖期の細胞核(Ki-67陽性)を抽出・分析した結果、異型核の立体構造は顕著な多様性を示すことを明らかにしました。

平成27年度 「唾液腺腫瘍“腺様嚢胞癌”の組織構造」

唾液腺由来の悪性腫瘍である腺様嚢胞癌を対象として健常な顎下腺との比較解析を行いました。癌病変および健常顎下腺の連続切片(HE染色原図;12 μm間隔で40枚)をトレースして組織形状をマッピング、スチレン素材(350×280×7 mm;40枚)に転写、切り出し、積層して立体模型を作製しました。平坦な外観の健常腺組織と異なり、癌組織では大小の胞巣による外表面の起伏がみて取れます。本グループでは、癌実質と間質を切り分け・色付けしたうえで積層する工夫を加えており、癌実質が個々に独立した球状構造として間質空間に存在していることも実証できました。細胞同士の連結性の変化が癌の胞巣形状に繋がる可能性が考えられました。


平成26年度 生命歯学探究 病理学領域

初期の粘膜病変における構造変化を比較解析するため、健常舌粘膜と腫瘍性病変(上皮内癌)について立体構造解析を行いました。本グループでは、組織成分(上皮・結合組織)を分画するアイデアを加えて、実際には観察できない組織内部形状の直視を試みました。その結果、健常上皮・上皮内癌ともに、上皮層(赤)表面観は似ていましたが、分離して上皮基底部を直接観察すると、健常上皮では表面同様に平滑であるのに対し、上皮内癌の基底層側では、充実した隆起状であることが確認できました。さらにこれらの模型の各層は、どの面からも取り外して観察ができる工夫をしており、増殖細胞の局在も詳細に調べることが可能になりました。

平成25年度 「歯原性腫瘍“エナメル上皮線維腫”の組織構造」

先輩グループの「エナメル上皮腫と歯胚との類似性?」、「そもそも歯胚は立体的にどうなっているの?」という疑問を受け継ぎ、本探究グループでは、マウス胎仔の臼歯歯胚および歯胚と同じ組織成分(歯原性上皮と外胚葉性間葉由来)に由来するエナメル上皮線維腫の立体構造について解析しました。エナメル上皮線維腫の模型では、歯堤様の組織起伏や蕾状期エナメル器に似た突起状胞巣が直視でき、歯胚発生の初期段階に相当する組織環境が形成されていることを示しました。染色画像原図から陽性反応の抽出、組織形状に基づく位置合わせのプロセスに画像処理プログラム(ImageJ/Fiji)を応用することで、短期間で高精度の立体構築を実現しました。



平成24年度 「歯原性腫瘍“エナメル上皮腫”の組織型分析」

口腔領域における代表的な腫瘍病変であるエナメル上皮腫の2大組織型として濾胞型と叢状型の構造を解析しました。本グループでは、模型化技法を最大活用し、実質・間質の両模型を同時作製して形状の比較をするというユニークな視点を取り入れています。どちらの組織型も歯原性上皮に由来しますが、組織空間への展開様式の違いが良くわかります。エナメル上皮腫では腫瘍実質や間質に変性(嚢胞化)がみられますが、組織構造に基づくと、腫瘍の増殖圧による栄養供給路の狭窄などが原因として考えられました。この探究グループでは、作った模型を規格撮影し、PC上で再現・観察できるバーチャルリアリティ化も達成しました。→ 濾胞型(714KB)   叢状型(745KB)

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平成23年度 「舌扁平上皮癌(舌癌)のリンパ管侵襲」

口腔癌が高頻度でリンパ節転移する点に着目して、臨床でリンパ節転移が確認された舌癌症例を用いて癌胞巣とリンパ管走行の立体モデルを作製しました。模型では、複雑に分岐する癌胞巣構造とその外縁で圧平された管腔をなすリンパ管の走行を再現できています。間質空間では母体となる癌胞巣から孤立・分離した癌細胞集団が存在しており、癌細胞の一団がリンパ管に近接していく様子を捉えました。この探究グループでは、リンパ管内腔を可視化するために透明ゲル素材を採用する新たな工夫を加え、リンパ管腔内に侵襲した癌細胞集団が柔軟に形状を変化させてリンパ行性転移していく可能性を示しました。



平成22年度 「舌扁平上皮癌の浸潤形態」

初期癌から進行癌に至る複数の舌癌症例を対象として、上皮構造と細胞異型の変化を観察しました。また、進行癌が舌組織に広がる様子をより詳しく知る目的で、癌浸潤先端部位の詳細な組織立体模型を作製しました。この癌胞巣モデルにより、癌胞巣の多くが3次元的に連続しているなかで、数個〜数百個の癌細胞からなる胞巣が腫瘍母体から離れた間質空間に孤立して存在することを実証しました。本グループは、複雑な癌胞巣構造の 相対的位置関係を忠実に再現するために画像情報の正確なトレースと位置合わせ方法を考案し、模型素材にも加工の容易なスチロール素材を採用するなど、立体模型作製方法の原型を確立しました。

平成21年度 「扁平上皮癌の病理組織学的特徴」

生命歯学探究カリキュラムの初年度では、病理診断に用いる組織切片の作製と染色を体験しています。舌癌を対象として、学生自身でHE染色した画像を用いて癌細胞の形態変化を観察しました。また、免疫染色情報に基づいて癌細胞の増殖活性を形態計測し、癌胞巣が拡大していく様子を示しました。さらに、悪性腫瘍としての形態的特徴をより深く捉えるために、癌胞巣の立体モデル作製に挑戦しました。段ボール素材の切抜きをクリアシートに貼付・積層させたシンプルな模型ですが、増殖の盛んな癌細胞集団が周囲組織へ浸潤する様子が伝わってきます。病理グループ第一期生が病変を立体的に捉えることの重要性を示唆した影響は大きく、後輩グループに共通した探究アプローチとして受け継がれています。

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