日本歯科大学 病理学講座

鑑別診断課題56

課題56-a画像 課題56-b画像
課題56-c画像 課題56-d画像

設問1 4枚のうちでどれが異なるか? 
C

設問2 残り3枚の組織像で共通する特徴(病変・病態・分類など)は?
嚢胞病変に見られる重層扁平上皮と口腔粘膜病変 (扁平苔癬の症例で錯角化をともなう上皮)とを鑑別する。嚢胞上皮は濾胞性歯嚢胞の 症例から撮影されたもので、角化層をともなっておらず、軽度の炎症反応と上皮脚の 伸長が認められる。

設問3 それぞれの組織像に最も適する病変の診断名は?
A:炎症反応をともなう嚢胞壁
写真上方が嚢胞腔(組織液を貯留した空間)にあたることは、 上皮細胞が丸くなって剥離していくことから推定できる。嚢胞腔を囲む 上皮組織は扁平上皮の特徴を示すが、角化傾向は見られない。 上皮下の結合織では、炎症細胞の浸潤が著明であり、 上皮脚の伸長と拡張した血管が観察される。
B:炎症反応をともなう嚢胞壁
Aと類似した組織所見。上皮脚は伸長しているが、上皮細胞に異型は 認められないことにも注意する(濾胞性歯嚢胞の嚢胞壁から扁平上皮 癌が発症することもある)。
C:扁平苔癬
扁平上皮と炎症細胞浸潤が共通する組織所見であるが、上皮層では 錯角化しており、基底細胞が不明瞭で、有棘細胞層でも炎症細胞 (主にリンパ球)の上皮内侵入にともない、細胞間隙が拡張(水腫様変化) している。
D:炎症反応をともなう嚢胞壁
A、Bと共通する組織所見を示しているが、炎症反応にともなって上皮・ 結合織の境界が不明瞭になっている。上皮層に炎症細胞が侵入しており、 嚢胞腔では遊離した細胞核が浮遊して認められる。

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