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日本歯科大学図書館所蔵書より(第二十報)

 〜沖野節三著『歯科臨床家ニ必要ナ診療録ノ書き方(和独対照)』

について〜

 

鹿児島大学名誉教授

日本歯科大学客員教授

島田 和幸

 

  著者である沖野節三は旧姓を亀井と云い、沖野岩三郎の養子となった。明治37年(1904)に和歌山に生まれ、大正7年東洋歯科医学校(現日本大学歯学部)を卒業し、スイスのチューリッヒ大学歯学部に留学し、当時の補綴学の大家であるGysi教授に師事した。帰国後は九州歯科医学専門学校教授兼附属医院長(現九州歯科大学)を歴任し、昭和13年日本大学専門部歯科教授、昭和27年4月には新制日本大学歯学部教授となり、歯科補綴、歯科診断学を担当した。その教授時代には多くの他の役職も歴任し、昭和51年2月に逝去した。

今回、紹介する書は日本大学専門部歯科時代に出版されたと思える。本書の欧名は『Zahnärztliche Protokoll=Beschreibung Japanisch=Deutsch』である。今回の書は昭和15年2月25日に定価5円にて東京の金原商店より出版された初版本であり、本書の大きさは縦×横243o×165oで、全143ページからなっている。内容目次としては既往症及び家族歴、現症、主訴、所見記載符号、臨床所見、処置及び経過に関するフレーズやカルテに記載する用語等に関する事項が全106ページにわたり記されている。なお記載方法としては左のページに日本語で、右のページにはその日本語に対応する独文が記されている。具体的には主訴用語例の項目では歯牙疾患や顎顔面口腔領域に関する疾患の日本文例とその独文例が記されている。また臨床所見記載符号の項目では、カルテの歯式に記載する詳細な例が図と共に記されている。臨床所見では口腔内のことが事細かな観察事項と現状の既往症、口腔以外の一般的現症、口腔に関する局所所見が記載されており、そして最後の診断に関しての項目では具体的な症例をあげて日本文で説明し、更にそれを独文に翻訳して記載されている。処置及び経過では実際の処置について、日本文と独文で対比されている。以上が記載の大まかな紹介である。

ドイツ語で診療録を記す様なことは現在では昔の様に考えられるがこれまでにも記載内容に関する類の書は殆ど見られないことから当時としては画期的な出版書であったと思える。本書のドイツ語に関する教育は時代的な歴史を感じるが、しかし記載内容に関しては現在の歯科臨床に十分に使用できる内容であると考えて今回、紹介した。

 

 

 

*図書整理番号(配架場所 地下2階):

 ・歯科臨床家ニ必要ナ診療録ノ書き方(和独対照)

   (請求番号 D.03/O 52/W3558)

(2017.11.1up)

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