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日本歯科大学図書館所蔵書より(第十七報)

 〜川上為次郎著『齒科醫學史』について〜

 

鹿児島大学名誉教授

日本歯科大学客員教授

島田 和幸

  

歯科医学史

History of Dentistry

 今回は歯科医学史に関する著書の中で最も著名な一冊とされている川上の著書を紹介する。川上為次郎は明治16年に千葉県で生まれ明治39年に東京歯科医学院に入学し、明治40年に卒業後、歯科医術開業試験に合格し、その後新しく設立された東京歯科医学専門学校(現東京歯科大学)の助手に採用され、大正4年には歯科治療学、歯科薬治学の教授に就任している。その後は、口腔衛生にも関心を示し、海外に出張し、帰国後は中山文化研究所で口腔衛生に関する研究を行っている。大正12年ごろから日本大学専門部歯科(現日本大学歯学部)にて歯科医学史と口腔衛生学教育に従事するようになる。

歯科医学史の講義録とイタリアの口腔科医であったVincenzo Gueriniの著書で英文に翻訳された”History of Dentistry”を参考にして書きあげられたのが今回の書である。本書は昭和6年8月1日に東京の金原商店より正価七圓五拾錢で出版された。本学図書館にはその復刻版が所蔵されている。記載内容はまず始めに医学史で著名な富士川游による序に始まり、項目は古代、中世、近代の大きく三期に分類されている。第一篇は古代史として、エジプト、バビロニア、フェニキア、シリア、ヘブライ、インド、支那、ギリシャ、エトルリア、ローマでの各歯科医学、第二篇はアラビア、中世後期のイタリア、フランスの歯科医学、第三篇は16世紀の金の歯、17世紀、18世紀、フォーシャルとその他のフランス学者、バッフとドイツ学者、ハンター、18世紀のアメリカの歯科医学、陶歯の創造、19世紀の歯科医学、ウェルス、モートン、19世紀のアメリカ、歯科医学校、19世紀の歯科医学の各分科の発達、齒科医学雑誌、万国歯科医会議、日本における歯科医学の発達、江戸時代末期までの歯科医学、明治時代における歯科医学の建設者などに関して総704ページにわたり記載されている。

これまでに出版された日本語による歯科医学史に関する書の中でも今回の紹介の書はその記載内容等から見ても最も充実していることから現在でも高く評価されている一冊であり是非一度は目を通していただきたい歯科に関する歴史書として今回紹介する。

 

*図書整理番号(配架場所 地下2階):

 ・歯科医学史 ; 復刻版 (請求番号 D.02/Ka94/W20192)

 ・History of dentistry (請求番号 D.02/G932/764)

(2017.6.20up)

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