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日本歯科大学図書館所蔵書より(第十六報)

 〜宮原 虎著『歯牙ノ病理及療法』について〜

 

鹿児島大学名誉教授

日本歯科大学客員教授

島田 和幸

  

 今回は宮原 虎の著書について紹介する。宮原は明治44年に東京大学医学部を卒業した医師である。彼は卒業後、大学病院の歯科教室に入局し、当時の歯科教室発展に尽力した人物の一人である。歯科教室在職中は助手として、午前中は歯科診療に従事し、午後は解剖学教室の小金井良焔ウ授のもとで歯牙の研究に従事をしていたことが長尾 優の著書より知ることができた。宮原は医師でありかつ歯科の知識と技術を持ち合わせさらに基礎医学である解剖学にも造詣が深く、大正10年には東京醫學専門学校(現東京医科大学)の解剖学教授として教育に従事していたことも判っている。大学退職後は歯科口腔外科医として東京で開業している。

 宮原の著書としては『歯科学提要』(1918)と『歯牙ノ病理及療法』(1926)が現存しているが今回は本学図書館所蔵の『歯牙ノ病理及療法』について紹介する。本書は初版は大正7年(1917)だが今回の紹介書は第四版で大正14年(1926)に東京の金原商店より出版された書である。この書の凡例によると医師や医学生に歯科学の概論を系統的に知ってもらうと共に歯科へ進学する学生に対しても歯科に関する全般的な歯学概説の解説書と記されている。記載内容からすると主として医師、医学生を対象にした歯および口腔周辺器官・臓器に関する口腔系に関する医学概論書の一冊とみられる。

 記載はまず総論と各論に大きく分類され、総論では歯牙の解剖学、組織学、生理学、細菌学、および法医学並びに人類学的説明が記載されている。各論は全十三章に分類されており記載順には歯の畸形異常、生歯障碍、齲蝕、硬組織の欠損、歯髄疾患、歯(根)膜炎、歯肉諸病、歯牙の外傷、歯牙の腫瘍、歯牙の変色、口臭、口腔清掃法、歯痛について機能形態並びに病態的な解説が簡潔に全140ページにまとめられている。

 東京大学医学部出身の医師でありながら口腔周辺を対象とする外科医でありかつ解剖学教育にも従事した経験を持つ非常にユニ−クな医師による著書の一冊を紹介した。

 

*図書整理番号(配架場所 地下2階):

  歯牙ノ病理及療法 ; 第4版 D.14/Mi73/1333

*国立国会図書館デジタルコレクション

  歯科学提要 (図書館からのみ閲覧可能)

(2017.5.22up)

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