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日本歯科大学図書館所蔵書より(第九報)

 〜G.V.Black著の『A work on special dental Pathology』について〜

 

鹿児島大学名誉教授

日本歯科大学客員教授

島田 和幸

 

 今回紹介する本の著者はGreene Vardiman Black(1836-1915)である。Blackは歯科保存学分野で特に窩洞形分類法では有名である。彼は1836年米国イリノイ州ウインチェスターで生まれ独学で歯科医師免許を修得している。1870年にはセントルイスのミズリー歯科医学校教授となり、その後シカゴ歯科医学校、アイオワ大学歯学部、ノースウェスタン大学歯学部で教授として歯科病理学、細菌学、歯科治療学の教授として活躍していた。Blackの大著とされているのは彼が72歳の時に出版した研究の集大成とも言える『A work on operative dentistry』2巻である。しかしこの書については良く知られているので今回はBlackの別の書について紹介する。

今回の紹介する書は歯髄と歯根膜組織の病理学研究を主として書かれた『A work on special dental pathology devoted to the disease and treatment on the investing tissues of the teeth and the dental pulp』である。本書の大きさは縱×横260×175oで1915年アメリカのシカゴにあるMedico-dental Publishing Companyと英国ロンドンのClaudius Ash, sons & coの二社より同時に出版されている。本文中の説明のために図は全518枚よりなり総475ページよりなっている。本書の主だった記載内容としては歯肉、セメント質、歯周組織、歯根膜、歯槽骨、唾液、歯牙の病理、唾液成分、歯肉の病理、歯周組織の病理、歯髄の病理、歯髄腔、歯根の病理、歯髄の急性・慢性疾患、根尖病巣の症状、急性及び慢性の疾患、診断、口腔診査、口腔衛生等に関する基礎医学分野の内容から治療処置に関する知識や問題点などを中心に歯と口腔周辺の構造、病態状況について懇切丁寧に解説がなされている書である。

本書はBlackの著書の中では歯科保存学的な記載よりも口腔の基礎的な知識を臨床につなげる役目をする記述がなされた書であり、現在の歯科医学の発展進歩の状況からすると少し記載内容は古典的に思われる。しかし、一度は手に取って読んで頂きたい書の一冊と考えて紹介した。

 

*図書整理番号:

  ・D.1/F792/F421, F472 地下2階貴重書

(2016.4.1up)

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