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日本歯科大学図書館所蔵書より(第五報)

〜『Course of lectures on dental physiology and surgery, delivered at the Middlesex hospital school of medicine』について〜

 

鹿児島大学名誉教授

日本歯科大学客員教授

島田 和幸

 

 

 本書はJohn TomesによってMiddlesex病院医学部の学生に向けて歯の生理と外科について講義された内容を一冊の書としてまとめたものである。本書の著書は現在では英国歯科医師の近代化に尽くし、また口腔組織学の教科書の中には必ず記載されているトームス線維やトームス突起などを発見したことで有名な人物である。John Tomesは英国のGloucestershire Weston-on-Avonで1815年3月21日に生まれ、1895年7月29日に死去している。彼は1836年にはKings Collegeの医学部に入学し、卒業後はMiddlesex病院で働いていた。彼は病院では口腔外科医として働き、特に麻酔や抜歯に関して種々の工夫を行っていたことでも有名である。そのことを一冊にまとめた書として、彼の口腔外科での業績については1859年に“A system of dental surgery”と云うタイトルの書を出版している。今回はこの書とは別の書で日本語書名で云えば“歯の生理と外科の講義録”について紹介を行う。本書は1845年LondonのJohn W. PARKER, West Strand,で出版された縱×横220×145oの書であり本文と図譜12枚をあわせると全375ページより構成されている。記載はすべてで16コマの講義形式で組まれている。その内容として、第一講は一般的な歯の構造、第二講は上下顎歯の咬合、第三講は歯の組織、第四講は動物の歯の発生、第五講は歯髄、第六講は乳歯、第七講は乳歯の異常、第八講は永久歯の異常、第九講は歯牙の破損、第十講は歯の組織の病態、第十一講は歯の病態、第十二講は歯髄の病態、第十三講は十二講の続き、第十四講は歯槽の病態、第十五講は歯の手術、第十六講は咀嚼の回復である。そしてそれぞれの各講義の中に説明のための図譜が加えられており、本文中の図はすべてで87図からなっている。この中でも特に注目したいのが第二、三講である。なぜならば今日でもトームス線維、突起などを詳細に説明しているのがこの二、三講であるからである。

以上、今回紹介した図書は現在でもトームス線維、突起等で知られていて、その原典書として注目したい。なお本学には同著者の“A system of dental surgery”の初版(1859)も所蔵されているので是非これらの図書を一度は読んでいただきたいと思う。

*図書整理番号:

  ・D.3/T656/F424 地下2階貴重書

  ・D.3/T656/9636 地下2階貴重書 (A system of dental surgery)

(2015.12.1up)

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