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日本歯科大学図書館所蔵書より(第四報)

〜『Anatomie du système dentaire, considérée dans l’homme et les animaux』について〜

 

鹿児島大学名誉教授

日本歯科大学客員教授

島田 和幸

 

 

  本書を日本語タイトルに翻すと『ヒトと動物に関する歯の系統解剖学』と言える。動物からヒトへの歯の形態学に関する解剖書である。本書の著者であるPhilippe-Frédéric BlandinはフランスのAubignyで1798年12月2日に生まれ1849年4月16日に没している。彼は外科医であると同時に解剖学者としてフランスのHôtel-Dieuやパリ大学医学部の教授も兼担していた人物である。口腔領域では粘液性の分泌腺である前舌腺について”Blandin’s glands”と云う名称が彼の名をとった器官として残っている。また彼の解剖書としては『Traité d’anatomie topographique』(1834)が有名な書として残っている。本書は縦×横157×100oの小版本で出版社はブリュッセルのSociété Encyclographique Des Sciences Médicalesから1836年に出版された本文全257ページと一枚の付図から構成された書である。

記載内容であるが、まず大きく二つの章に分類されている。その第一章では大きく歯の記載に関する歴史について6つの時期に分類しており、エジプト、中国、ギリシャ文明からアリストテレス、アリストテレスからガーレン、ガーレンからベザリウス、ベザリウスからハーベイ、ハーベイからビシェット、そしてビシェットから現在(出版当時)までの歯についての文献や記載について歯に関する解剖史が述べられている。第二章は歯の系統解剖であり、それらの章を第一章と第二章に分類し、第一章ではヒトの歯についての説明であり、その内容としては第一節ではヒトの歯の構造と形態について述べ、第二節ではヒトの歯の組織構成についてが述べられている。第三節ではヒトの歯の発生学的内容(乳歯及び永久歯)が記載されている。そして第四節では歯による顔面への影響や機能的重要性の説明がなされている。そして最後の第五節第一章では年齢、人種及び各個人における歯の変異についてが述べられて、第二章では下等動物より哺乳動物に至る歯の形態、さらにこの章の終わりには無脊椎動物の歯に相当する器官の説明が加えられている。付図は一枚よりなり、前歯、大臼歯の断面図、子供の下顎骨と乳歯の歯胚、成人の永久歯の上顎と上顎歯の配列、子供の上顎骨と上顎歯と口蓋、子供の下顎と成人の下顎などの木版図12枚が画かれている。

この書はヒトから動物に至るまでの歯に関する比較解剖書としてはかなり初期の図書で、比較解剖書の初期の本としては貴重な図書の一冊であり今回紹介した。

 

*図書整理番号:

  ・D.09/Dr.Peck寄贈/10956 地下2階貴重書

(2015.11.2up)

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