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日本歯科大学図書館所蔵書より(第三報)

〜カラベリー結節に関する書−『Anatomie des Mundes』−について〜

 

鹿児島大学名誉教授

日本歯科大学客員教授

島田 和幸

 

図1 解説本

 

図2 図譜集

 今回は歯科医師であれば誰でも知っている上顎大臼歯の近心舌側咬頭の舌側に出現することがある小隆起を報告したGeorg Carabelliの原著について紹介する。著者の正式な名前はGeorg Carabelli, Edler von Lunkaszprieで1787年12月11日にPestで生まれ、1842年10月24日にViennaで没した。ハンガリーの著名な歯科医師でVienna大学の歯科口腔外科教授でもあった。また彼はオーストリア皇帝の皇帝歯科医でもありVienna大学の歯学部創設者の一人でもある。

 今回紹介する書は2冊本から構成されている。一冊は解説本であり、もう一冊は図譜本である。両書共にWienのbei Braumüller und Seidel社から出版されていて、解説本のタイトルは 『Anatomie des Mundes(口腔の解剖)』と云う書名であり、1942年に出版されている。もう一冊の図譜書はすべて図譜のみで構成されていて、1944年に出版されている。1942年に出版された解

説書の記載はまず目次に始まり、次に口腔の骨、子供から成人へと成長した時の上、下顎骨や口蓋骨についてが述べられ、その後は歯牙の各論になっている。その各論としては上、下顎の各歯牙や歯髄腔、歯根そして乳歯の説明、歯の異常歯、歯列、顎関節、口腔の内部、舌、口蓋、口腔腺、血管、リンパ管、神経など口腔領域に関する諸器官の説明がなされている。その中でも特に注目される記載は今回の結節に関する記載がなされている上顎歯の項目である。カラベリー結節に関しては解説本の中の107ページ中にtuberculus anomalusとして記載されている。次に図譜書であるがこの書名は『Kupfertafeln zu v.Carabelli’s Anatomie des Mundes』で1844年に出版された全36枚図から構成されている書である。図譜書の中でカラベリー結節の明確な図に関しては確認出来なかった。あえて云うならば咬合面図が記されていたのは図譜書のTab.]UのFig4であろうか?今回の書とは別に 1844年に”Systemalisches Handbuch der Zahnheil Kunde”と云う書のリプリント版も当図書館には所蔵されており、両書との内容を比較してみたが全くその記載内容は同じであった。以上のことからちなみに歯の異常結節とされるカラベリー結節に関する原本が、我が国においては全国のどこの図書館に所蔵されているかについて調べてみたところ東京大学図書館と本学図書館のみであった。そのことより本書は非常に貴重な書の一冊であり、歯科医師としては是非一度は見ておきたい書であると考えて今回は紹介した。

*図書整理番号:

  ・解説本 D.11/C257/5731 地下2階貴重書

  ・図譜集 D.11/C257/5732 地下2階貴重書

(2015.8.21up)

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