第32回日本歯科心身医学会総会・学術大会

特別講演Ⅰ

うつ病に関連した脳部位と最新の診断治療
~脳卒中後うつ病を含めて~
Recent diagnosis, treatment and brain region related to depression
including post-stroke depression.

木村 真人 先生  Mahito Kimura
日本医科大学千葉北総病院 メンタルヘルス科 Department of Mental Health, Nippon Medical School Chiba Hokusoh Hospital

 うつ病は世界的規模で増加を続けており、その対策が最重要視されている疾患である。本邦においても厚労省は2011年にこれまでの4疾病に、うつ病などの精神疾患を加えて5疾病5事業として重点対策に乗り出している。
 うつ病の発症要因には遺伝生育的要因、心理社会的要因、器質的(身体的)要因などが重要であるが、脳内で起こっている神経生物学的要因が次々に解明されてきている。従来のモノアミン仮説に加えて、BDNF(脳由来神経栄養因子)の減少による海馬神経障害、DLPFC(背外側前頭前野)の機能低下と扁桃体の暴走、帯状回膝下部(Cg25)の活動亢進などが示されている。
 また器質性うつ病の中で、脳卒中後うつ病は病変部位との関連についての議論が続いているが、急性期には左半球病変、慢性期には右半球病変との関連が高いことが示唆されている。脳卒中後うつ病は脳卒中患者の約3割に出現し、予後に悪影響を与えるため、その対策は重要である。千葉県では脳卒中地域連携パスにうつ病評価尺度(PHQ-9推奨)を組み込んだ運用が開始されており、全国的な展開が望まれる。
 うつ病は「こころの病気」というより「脳の病気」としての理解も必要である。近年、脳の病態生理に基づいた新しい診断法や治療的試みが多くなされるようになっている。その中で、光トポグラフィー検査は、精神科領域では唯一の先進医療として2009年に厚労省が認可し、2014年から保険適応になっている新しい診断技術である。簡便で侵襲性がなく、うつ病と双極性障害の鑑別に有用であり、今後の活用が期待されている。治療においても薬物療法だけでなく、海外においては脳の機能変化を是正するような刺激療法として反復経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)、磁気けいれん療法、深部脳刺激療法(DBS)などが行われており、それらのうつ病に対する新しい治療法についても紹介したい。

略歴:
S59(1984)  日本医科大学卒業
H3(1991)  医学博士
H4(1992) 日本医科大学精神医学教室講師
H11(1999) アメリカ,アイオワ大学精神科に留学し、ロビンソン教授のもとで脳卒中後の感情障害や認知障害についての研究に従事
H13(2001) 日本医科大学精神医学教室助教授
H15(2003) 日本医科大学千葉北総病院・メンタルヘルス科部長・准教授
H22(2010) 日本医科大学千葉北総病院・メンタルヘルス科部長・病院教授

学会等役員:
日本精神神経学会代議員
日本臨床神経生理学会評議員
日本生物学的精神医学会評議員
日本総合病院精神医学会評議員
日本老年精神医学会評議員
日本神経精神医学会評議員
日本催眠学会副理事長
日本心身医学会代議員・関東地方会幹事 等

専門医等:
精神保健指定医
日本精神神経学会専門医・指導医
日本総合病院精神医学会専門医・指導医
日本老年精神医学会専門医・指導医
日本臨床薬理学会指導医

専門領域:
気分障害全般、脳卒中後うつ病を含めた血管性うつ病の病態や治療に関する研究、認知症など老年精神医学

受 賞:
脳卒中後うつ病研究で2001年 American Neuropsychiatric AssociationよりYoung Investigator Awardを授与される。