第32回日本歯科心身医学会総会・学術大会

教育講演Ⅱ

医療における問題場面での対応術
〜医療者の心を守るコミュニケーション技術〜
Correspondence technique in the problem scene in the medical care;
Communication skill to keep the emotions of the medical person

内藤 宏 先生 Hiroshi Naitoh
藤田保健衛生大学 医学部 精神神経科学講座 Department of Psychiatry, Fujita Health University, School of Medicine

 医療は万能では無く、適切な診断治療が行われても治療転帰は様々である。こうした医療の不確実性は医療者にとっては常識であるが、病気を患い苦悩する患者・家族にとっては受け入れがたい時期がある。医療サービス場面では、苦情・対立・意見の相違等(以下問題場面と略)が時に発生するが、不慣れな対応により医療者と患者・家族との関係が悪化したり、対応した医療者が疲弊し日常生活に支障をきたしたりすることも少なくない。本講演では、医療者側に何ら落度が無い理不尽な苦情から、医療者の過失による医療事故まで、様々な問題場面に遭遇しうることを前提とした対応術を、回避編と遭遇編の二部構成で紹介する。
 回避編では、物わかりが悪く疑り深い患者の事例を取り上げ、その背景には発達障害やパーソナリティ障害等のハンディーキャップが存在しうること、クレームはむしろ医療機関への患者のニーズが体現されており、当事者には転院の希望がないことを解説する。対応のポイントとしては、患者を見捨てずむしろ寄り添う医療者の姿勢を示すことである。  遭遇編では、医療者がキャビンアテンダントと同様に感情労働者であり、常に冷静な対応が求められていることを前提に、感情のコントロール法を紹介する。特に問題場面では、怒りや嫌悪感等の陰性感情が医療者に生じることが少なくないが、対応スキルとして腹式呼吸法、対象の客体化と好奇心という武器(アルパカ作戦)、瞬時に認知を修正する呪文やヒント等を提示する。
 国際的な医療機能評価(JCI)は、患者が施設敷地内に足を踏み入れた時から、安心・安全を尊重した気遣いの体現が求めており、それはハード面のみならずソフト面にも細かく及んでいる。こうした安全文化の潮流の中で、本講演での問題場面でのコミュニケーション技術を取り入れ、併せて医療者としての在り方についてもお考え戴き、明日からの診療に喜びを感じて戴ければ幸いである。


略歴:
1984年 藤田学園保健衛生大学医学部卒業
1984年 藤田保健衛生大学病院 精神科研修医
1985年 大同病院 内科・外科研修医
1986年 藤田保健衛生大学病院 精神科医師
1990年 藤田学園保健衛生大学大学院 医学研究科修了
1990年 豊岡台病院 精神科医師
1992年 藤田保健衛生大学医学部 精神神経科学講座 講師
2003年 同 准教授
2010年 同 臨床教授

所属:藤田保健衛生大学医学部 精神神経科学講座 教授(コンサルテーションリエゾン・緩和ケア担当)、健康管理室副室長、医療の質・安全管理部 医療の質室長代理

資格等:医学博士、精神保健指定医、臨床研修指導医、精神科専門医・指導医、一般病院連携精神医学専門医・指導医、臨床精神神経薬理学専門医・指導医、日本総合病院精神医学会評議員、日本臨床精神神経薬理学会評議員、名古屋市精神医療審査会委員、名古屋地方検察庁嘱託鑑定医、トヨタ自動車管理医、名城大学非常勤講師、PIPCスーパーバイザー

専門:臨床精神医学、コンサルテーション・リエゾン精神医学、精神薬理学、職場のメンタルヘルス、精神腫瘍学(緩和ケア)、司法精神医学

所属学会:日本精神神経学会、日本臨床精神神経薬理学会、日本総合病院精神医学会、日本サイコオンコロジー学会、日本生物学的精神医学会、日本神経精神薬理学会、日本老年精神医学会、日本認知療法学会など